インフラ未整備な法人遊休地を駐車場シェアリングで収益化:対策と検討事項
はじめに
法人資産として保有している遊休地の中には、アスファルト舗装がされていなかったり、区画線が引かれていなかったりと、駐車場としてのインフラが十分に整備されていないケースが少なくありません。こうした土地の有効活用、特に収益化について、資産運用担当者様は様々な課題を抱えていらっしゃることと存じます。
駐車場シェアリングは、比較的低コストで遊休地を収益化できる手法として注目されていますが、インフラが未整備な場所での導入には、特有の検討事項が存在します。本稿では、インフラ未整備な法人遊休地を駐車場シェアリングで収益化するための具体的な対策と、導入にあたって考慮すべき点について解説いたします。
インフラ未整備な遊休地が抱える課題
駐車場としての基本的なインフラが不足している土地は、利用者にとって不便であるだけでなく、運営面でもいくつかの課題を抱える可能性があります。
- 舗装面の課題:
- アスファルト未舗装(砂利、砕石、土など)の場合、雨天時のぬかるみや、車両通行による砂埃、砂利の飛散などが起こり得ます。利用者の車両への影響や、近隣への配慮が必要となる場合があります。
- 舗装面に凹凸や水たまりができやすい場合、駐車のしやすさや安全性に影響します。
- 区画表示の課題:
- 区画線が引かれていない場合、利用者がどこに駐車すればよいか迷う可能性があり、駐車効率が低下することが想定されます。また、複数台が駐車する際にスペースを無駄に使いがちになることもあります。
- 照明の課題:
- 夜間の照明が不足している場合、利用者の安全確保や防犯上の懸念が生じます。
- その他:
- 適切なフェンスや境界がない場合、不法侵入や車両盗難などのリスクが高まる可能性があります。
- 入出路が狭い、傾斜がきつい、整備されていないなどの場合、車両の入出が困難になることがあります。
これらの課題は、駐車場シェアリングサービスの利用率や、利用者満足度、ひいては収益に影響を与える可能性があります。
駐車場シェアリングでの活用に向けた対策と検討事項
インフラが未整備な遊休地を駐車場シェアリングで活用する場合、課題に対し費用対効果を考慮した対策を検討することが重要です。必ずしも大規模な工事が必要なわけではなく、遊休地の状況や目指す収益レベルに応じて、様々な段階の対策が考えられます。
最小限の対策とシェアリング事業者の技術活用
初期投資を抑えつつ駐車場シェアリングを開始する場合、まずは最小限の対策から検討します。
- 簡易な区画表示:
- 区画線がない場合でも、ロープ、コーン、簡易的なポールなどを設置することで、大まかな駐車位置を示すことが可能です。
- 駐車場シェアリング事業者のシステムによっては、地図上で区画を定義し、利用者がスマートフォンアプリ等で自身の駐車位置を確認できる機能を持つ場合があります。物理的な区画線がなくても、システム側でナビゲーションを補完できるか確認します。
- 看板設置:
- 駐車場の利用方法、料金、注意事項、問い合わせ先などを明記した看板を設置します。これは、利用者への情報提供とトラブル防止に不可欠です。
- 簡易的な整地・清掃:
- 大きな石やゴミを取り除く程度の簡易な整地、清掃を行います。水はけが悪い箇所については、可能であれば応急的な対策を検討します。
- 利用規約での明記:
- 舗装状況や設備が十分でないこと、それに伴う注意事項(例: 砂利飛散の可能性、足元注意など)を、シェアリングサービスの利用規約や駐車場案内に明記し、利用者の理解を得るように努めます。
この段階では、土地のポテンシャルを最大限に引き出すことは難しいかもしれませんが、遊休資産のゼロからの収益化を実現する第一歩となります。
投資を伴う対策(費用対効果を考慮)
ある程度の初期投資が可能であれば、収益性や利用者満足度の向上を目指した整備を検討します。これらの対策は、かかる費用と見込める収益増加、あるいは他の土地活用方法との比較において費用対効果を慎重に評価する必要があります。
- 砂利敷き、砕石敷き:
- 土のままの状態と比較して、雨天時のぬかるみを軽減し、見た目も改善されます。アスファルト舗装よりもコストを抑えることが可能です。
- 簡易照明の設置:
- ソーラーライトや工事用照明などを一時的に設置することで、夜間の視認性を向上させます。本格的な照明工事よりも安価です。
- 区画線の引き直し:
- 簡易な塗料で区画線を引くことで、駐車効率と見た目が向上します。本設のアスファルト舗装と同時に行うのが一般的ですが、砂利敷きの上でも一時的に引くことは可能です(耐久性は劣ります)。
- フェンスの設置:
- 最低限の境界を示すフェンスを設置することで、セキュリティ意識の向上や無断駐車の抑制につながります。
これらの投資を行うことで、利用者が増加したり、より高単価で提供できるようになったりする可能性が考えられます。投資額、回収期間、将来的な土地の利用計画などを踏まえ、最適な整備レベルを見極めることが重要です。
駐車場シェアリング事業者との連携
インフラ未整備な遊休地を駐車場シェアリングで活用する上で、適切な事業者を選定し、密に連携することは非常に重要です。
- 現地の状況への理解と対応:
- 事業者がインフラ未整備な土地の活用実績を持っているか、現地の状況に合わせて適切なアドバイスや技術的なサポート(例: GPS位置情報の精度調整、利用マニュアルの作成など)を提供できるかを確認します。
- 利用者への情報提供と周知:
- インフラ状況(例: 未舗装、区画線なしなど)を事前に利用者に分かりやすく伝える仕組みを持っているか確認します。これにより、利用者の予期せぬトラブルやクレームを減らすことができます。
- トラブル発生時の対応体制:
- 駐車場内でのトラブル(車両の損傷、利用者間の問題など)が発生した場合の事業者の対応範囲や体制を確認します。特にインフラが不十分な場所では、思わぬトラブルが発生するリスクも考慮に入れる必要があります。
- 収益シミュレーションへの反映:
- 整備にかかる費用(初期費用、維持費用)を考慮した収益シミュレーションを事業者と共に実施し、現実的な収益ポテンシャルを把握します。
収益シミュレーションへの反映
インフラ未整備地の収益シミュレーションを行う際は、以下の点を考慮します。
- 整備コストの計上: 実施する対策(簡易的なものから本格的なものまで)にかかる初期費用や、砂利の補充などの維持費用を正確に計上します。
- 利用料金の設定: インフラレベルが低い場合、周辺の整備された駐車場と比較して利用料金を低めに設定せざるを得ない可能性があります。ただし、立地や需要によっては、インフラレベルに関わらず一定の需要が見込める場合もあります。
- 利用率の予測: 整備レベルが利用率にどのように影響するかを慎重に予測します。インフラが整っていないことによる利用者の敬遠がある一方で、低料金設定による需要増加も考えられます。
- 費用対効果の評価: 整備コストと見込める収益増加(または機会損失の削減)を比較し、投資判断を行います。段階的な整備による収益の推移予測なども有効です。
導入・運用における留意点
- 契約形態と法的側面:
- 駐車場として利用させる場合でも、土地の状況によっては建築基準法や都市計画法の確認が必要な場合があります。簡易な利用であれば、駐車場シェアリング事業者との間で土地の一時使用契約を結ぶことが一般的ですが、長期的な視点で弁護士や司法書士に相談することも検討できます。
- セキュリティ対策:
- 防犯カメラの設置(ダミー含む)、照明の強化、定期的な巡回(事業者または委託先)など、可能な範囲でセキュリティ対策を講じます。
- トラブル対応:
- 車両の損傷(砂利による傷など)、盗難、利用者間のトラブル、近隣からの苦情などが発生する可能性があります。駐車場シェアリング事業者のサポート範囲を確認し、対応フローを事前に定めておくことが重要です。
まとめ
インフラが十分に整備されていない法人遊休地であっても、駐車場シェアリングを活用した収益化は十分に検討に値する選択肢です。重要なのは、土地が抱える具体的な課題を正確に把握し、その課題に対して費用対効果を考慮した適切な対策を講じることです。
初期投資を抑えた最小限の対策から始め、収益の状況を見ながら段階的に整備を進めるアプローチや、駐車場シェアリング事業者の持つ技術やサポート体制を最大限に活用することが、インフラ未整備地での成功の鍵となります。本稿が、貴社の遊休資産活用の一助となれば幸いです。